口内炎は口腔内の粘膜だけでなく、歯ぐき(歯肉)にもできることがあります。しかし、別の病気の可能性も考えられるため、歯科医師による適切な鑑別(診断)が必要です。
そこで、本コラムでは歯ぐきにできる口内炎の種類と、鑑別にあがるほかの疾患について詳しく解説します。正しく理解しておくことで、症状が現れた際に適切な対応が可能となります。ぜひご参考にしてください。
歯ぐきにできる口内炎の種類
口内炎は舌や頬の内側にできるイメージがありますが、歯ぐきにも発症することがあります。歯ぐきの口内炎は、その原因や症状によって適切な治療法が異なるため、正確な診断が求められます。
歯ぐきに発症する主な口内炎には、以下のような種類があります。
・アフタ性口内炎
・カンジダ性口内炎
・ヘルペス性口内炎
・ほかの病気に付随した口内炎
以下では、それぞれの特徴・原因・治し方について解説します。
アフタ性口内炎
アフタ性口内炎は最も一般的な口内炎の一種で、2~10mm程度の円形の白い潰瘍が発生し、強い痛みをともなうことがあります。
直接的な原因は明らかとなっていませんが、免疫システムの異常反応、ビタミンB12・鉄分・葉酸の不足、ストレス、遺伝的要因などが関与している可能性があります。睡眠不足、食生活の偏り、風邪などの体調不良による免疫力低下が、発症の原因となることがあります。
通常、2週間前後で自然治癒しますが、症状を緩和するためにステロイド含有軟膏、口腔粘膜貼付錠、鎮痛薬、抗炎症薬、洗口液などが使用されます。
カンジダ性口内炎
カンジダ性口内炎は、カビ(真菌)の一種であるカンジダ菌が口腔内で増殖することによって発症する口内炎です。
白い苔のような付着物(偽膜)が生じるタイプ(偽膜性カンジダ症)では、痛みが少ないことが多いですが、進行するとヒリヒリ感をともなうこともあります。
赤い発疹を生じるタイプ(紅斑性カンジダ症、義歯性カンジダ症)では、炎症や痛みをともなうことがあります。
免疫力が低下したときに生じやすく、口唇の荒れや味覚異常などの症状をともなうこともあります。抗真菌剤の入ったうがい薬や塗り薬、内服薬で治療します。
ヘルペス性口内炎
ヘルペス性歯肉口内炎は、Ⅰ型単純ヘルペスウイルス(HSV-1)の感染によって発症する口腔内の感染症です。歯ぐきや口唇に小さな水疱が密集して発生し、水疱が破れると痛みをともなう潰瘍になります。特に小児の初回感染は症状が全身に及ぶ可能性が高く注意が必要です。
治療は抗ウイルス薬の内服・軟膏の塗布が主な治療法ですが、症状に応じて対症療法を併用することもあります。
ほかの病気に付随した口内炎
アフタ性口内炎は通常2週間程度で治癒します。しかし、なかなか治らない難治性の口内炎や、繰り返し再発する口内炎の場合、以下の疾患が疑われます。
・壊死性潰瘍性口内炎
・ベーチェット病
・HIV
いずれも早急に病院での治療が必要な疾患です。繰り返す口内炎や、治りが悪い口内炎でお悩みの場合は、出来る限り早く医療機関を受診しましょう。
歯ぐきの口内炎と間違えられやすい疾患
口内炎と見た目が似ているため、誤認されやすい歯ぐきの病変があります。単なる口内炎と思って放置すると、適切な治療が遅れる可能性があるため注意が必要です。
以下の疾患は、歯ぐきの口内炎と間違えられることが多い代表的な病変です。
・瘻孔(サイナストラクト)
・歯肉腫(エプーリス)
・口腔がん(歯肉がん)
以下では、それぞれの特徴について解説します。
瘻孔(サイナストラクト)
歯根部で生じた膿が溜まった袋を指します。歯根破折などにより歯根部に細菌が感染し、膿が溜まったときに生じる病変です。指で瘻孔部分を押すと、膿が飛び出すこともあります。
歯肉腫(エプーリス)
歯ぐきに生じる良性腫瘍です。痛みはほぼありませんが、歯ぐきがコブのように盛り上がり、大きくなると違和感を覚えることがあります。特に、歯を圧迫するほどのサイズになると、歯の位置をずらしたり、噛み合わせに影響を与えたりすることがあるため、切除が検討されます。
口腔がん(歯肉がん)
歯ぐきにできるがんは「歯肉がん」と呼ばれ、口腔がんのおよそ25%を占めます。初期症状は歯ぐきの腫れ程度で、自覚症状はほとんどありません。進行すると潰瘍やしこりができ、出血などの症状があらわれます。
歯ぐきにできた病変は、口内炎とは限りません。少しでも気になる症状がある場合は、歯科医院を受診しましょう。
Q1:口内炎のホームケア方法を教えてください。
A1:丁寧なブラッシングのほか、うがい薬などを活用し、口腔内を清潔に保ちましょう。刺激の強い飲食物は避け、ビタミンB群を積極的に取れる食事を心がけることも大切です。
Q2:歯ぐきの口内炎で歯科医院にかかるタイミングは?
A2:痛みが強い場合や、症状が気になる場合は、早めに歯科医院を受診しましょう。また、2週間以上症状が続く場合も歯科医院にご相談ください。